会社売却・M&Aの前に企業価値を上げる
固定費削減は「倍率」で価値になる
会社や事業の売却を考え始めたとき、多くの経営者は「売上を伸ばして見栄えを良くする」ことを考えます。しかしM&Aの実務で買い手が見るのは売上より利益(営業利益・EBITDA)です。そして中小企業のM&Aでは、企業価値が「EBITDA×倍率(目安3〜5倍)+純資産」のような形で語られることが一般的です。
つまり:恒常的な固定費を年300万円削減すると、EBITDAが300万円増え、倍率4倍なら理論上1,200万円の企業価値向上に相当します。削減した金額そのものではなく、その数倍が売却価格に効く——収益物件の「NOI÷利回り」と同じ構造です。
1. なぜ「売上を伸ばす」より「固定費を削る」が先か
| 利益改善の手段 | 売却準備としての評価 |
|---|---|
| 売上を伸ばす | 時間がかかり再現性を疑われる。「売却前の一時的な押し込み」は買い手のデューデリで割り引かれる |
| 人件費カット | 従業員の動揺・退職リスク。買い手は人材も買っている |
| 広告費カット | 将来の売上を毀損すると見なされ、評価されにくい |
| 電気代等の購買条件見直し | 事業を一切傷つけない「質の良い利益改善」。恒常性が明確で買い手も評価しやすい |
買い手のデューデリジェンスでは「その利益は買収後も続くのか」が常に問われます。電力契約の切替による削減は、契約単価の改善=構造的・恒常的であり、買収後も続くことが説明しやすい、数少ない「ケチのつかない利益」です。
2. 計算例:ホール2店舗を運営する会社の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 2店舗合計の月間電気代 | 250万円 |
| 20%削減での年間削減額 | 年600万円 |
| EBITDA改善 | +600万円/年 |
| 企業価値への理論的影響(倍率4倍) | +2,400万円 |
※ 倍率は業種・規模・財務内容で変動する目安であり、評価額・売却価格を保証するものではありません。
3. パチンコ・アミューズメント業界は「今」が磨き時
パチンコ業界では大手による店舗・会社の取得が活発です(2025年には平成観光によるミリオン36店舗の承継など、大型の再編が続いています)。売却・承継の選択肢を持つホール運営会社にとって、電気代は1店舗で月100万円規模=削減インパクトが最も大きい固定費です。交渉のテーブルに載る前にEBITDAを磨いておくことは、売る場合は価格に、売らない場合は手残りに、どちらに転んでも効きます。
4. 売却プロセスのどこでやるか
- 売却検討の初期(アドバイザー選定の前後):電気代の無料試算に出す。必要なのは請求書12ヶ月分だけ
- ノンネーム・打診の前:切替完了(1〜2ヶ月)。月次損益に削減が反映され始める
- デューデリジェンス:削減後の契約書・請求書を提示。「恒常的な利益改善」として説明
5. よくある質問
売却するか未定でもやる意味はありますか?
あります。売れば企業価値に、売らなければ毎年の手残りに効きます。どちらに転んでもプラスになる準備は固定費削減だけです。
買い手に「売却前の化粧」と見られませんか?
電力契約の切替は契約単価の構造的な改善であり、一時的な費用先送りとは性質が異なります。切替後の契約書と請求書で恒常性を客観的に示せます。
企業価値の評価は誰に相談すべきですか?
M&Aアドバイザー・仲介会社・税理士にご相談ください。本記事の倍率計算は一般的な目安の説明であり、個別の評価・助言ではありません。
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